この記事のポイント
ROBOPROは、AI(人工知能)を活用して金融市場を予測しながら、投資対象である8つの資産の比率を大胆に変更することで、パフォーマンスの最大化を目指す資産運用サービスです。
今回のコラムは、ROBOPROが投資対象としている8つの資産のうち「金」に注目して、その価値や金への投資がいかに大切かについて、FOLIO金融戦略部シニア・アドバイザーである井上輝彦が解説します。
井上 輝彦(いのうえ てるひこ)株式会社FOLIO 金融戦略部 シニア・アドバイザー。1980年代から、アナリスト・ファンドマネジャーとして年金資金や投資信託の運用に従事。 2006年から大手資産運用会社にて株式運用部長を務める。 現職では、ROBOPROの運用分析やお客様向けの解説等を担当。
ROBOPROがリリース来から保有を続けている「金」とは何か?
司会:
井上さん、今回もよろしくお願いします。さて今回は「金」について解説していただきたいのですが、最近は金の値上がりがニュースになったり、SNSなどでも注目が集まったりと何かと話題の資産のようなのですが、一般の投資家にとってみると、まだまだよく分からなかったり馴染みの薄い部分もあります。そこで今回は金への投資がいかに大切かについて教えてください。
井上:
まず最初にパフォーマンスの話からしましょう。以下のグラフはROBOPROがサービスを開始した2020年1月15日から2024年11月29日までの、ROBOPROが投資対象としている8つの資産のパフォーマンスの推移なのですが、金は米国株式についで2番目にパフォーマンスがよく、ドル建てで約67%のプラスリターンを出しています。
※ 本グラフは、2020年1月15日を起点とし、過去の特定の時点においてROBOPROが投資対象としていた各ETFの配当金再投資ベースのドル建ての価額につき、2020年1月15日を基準とした累積リターンを日次で表示したものです。 データについては、Bloomberg等が提供する数値を用いて、FOLIOにて計算し作成したもので、信頼できると考えられる情報を用いて作成しておりますが、 情報の正確性、完全性等について保証するものではありません。なお、数値は小数第3位以下を切り捨てて表示しています。
※ 将来の傾向や投資収益等を示唆又は保証するものではありません。
司会:
意外な感じがするのですが、米国株式以外の他の株式よりも金の方がパフォーマンスが良かったんですね。
井上:
はい、そしてもう一つのポイントですが、この期間の金の動きを見てみると大きく下がるような局面はあまりなく、上下の波が多い米国株式などと比較すると安定した動きになっていることがわかります。
司会:
確かに米国株式と比べて変動幅が小さいですね。
井上:
では次に、そんな金をROBOPROは過去にどのくらいの比率で保有していたのかを確認してみましょう。こちらはROBOPROがサービスを開始した、2020年1月15日から2024年11月29日までの米国株式と金のドル建ての累積リターンおよび投資配分の推移を示したものです。上の線グラフが累積リターンで、下の棒グラフが米国株式および金の保有比率の推移です。
※ 将来の傾向や投資収益等を示唆又は保証するものではありません。
※ 本グラフは、2020年1月15日を起点とし、過去の特定の時点においてROBOPROが投資対象としていた各ETFの配当金再投資ベースのドル建ての価額につき、日次の累積収益率を表示したものです。データについては、Bloomberg等が提供する数値を用いて、FOLIOにて計算し作成したもので、信頼できると考えられる情報を用いて作成しておりますが、 情報の正確性、完全性等について保証するものではありません。
※ ROBOPROの投資配分の推移については、毎月のリバランス日における新たな投資配分比率を次回のリバランス日まで継続して示しています。毎月の投資配分の変更とは別に、臨時で投資配分の変更を実施している場合があります。 平均保有比率については、小数第3位以下を切り捨てて表示しております。
司会:
このグラフから何がわかるのでしょうか?
井上:
この期間における米国株式と金の保有比率を見てみますと、米国株式が19.98%の平均保有比率である一方で、金の平均保有比率は25.06%と高くなっています。さらにこのグラフで黄色で表している部分が金を保有していた時期なのですが、金を持っていなかった時期は無かったことがわかります。もちろん比率は変わるのですが、平均すると約25%ほど金を持っていました。
司会:
なるほど、ROBOPROはサービスをスタートさせてから、比率を変えながら金をずっと持ち続けていたということですね。ところで世の中では一般的に、金というのはどういう資産なのか教えていただけますか?
金の需要が最高水準だった2023年
井上:
金という資産は、株式や債券と異なり破産やデフォルトの起きない資産なので、財産の保全のために保有されるという特徴があります。また、リスクヘッジという意味で有効な資産であるというのが特徴ですが、まずは供給という視点からお話しましょう。
以下のグラフは2010年以降における金の供給量を表したグラフなのですが、毎年半分以上が鉱山そしてリサイクルによって金が供給されているのがわかります。これを見ると、金の供給というのは毎年4,000トン〜5,000トンの間で推移しており、ある年だけ急激に伸びるということはありません。供給が一定量である分、需要が少し高まると金の価格というのは一気に上がるという性質を持っています。
※上のグラフはWorld Gold Councilのデータを基に、FOLIOにて作成したものです。信頼できると考えられる情報を用いて作成しておりますが、情報の正確性、完全性等について保証するものではありません。記載の数値は小数点第2位を四捨五入して表示しています。また、将来の運用成果を示唆又は保証するものではありません。
司会:
なるほど、一年だけ際立って供給が多かったり少なかったりというのはなくて、毎年だいたい同じような供給量なんですね。
井上:
供給はこのように推移していますが、その一方で需要も見てみましょう。以下のグラフは2010年から2023年における金の需要動向(棒グラフ)、金価格の推移(黄色折れ線)を表したものです。
まずこの棒グラフの黄色の部分に注目していただきたいのですが、これは宝飾品に関した金の需要動向です。特徴的なのは新型コロナウィルスが拡大した2020年以外は毎年安定しており、金の需要の半分近くは宝飾品が占めているという点です。
※上のグラフはWorld Gold Councilのデータを基に、FOLIOにて作成したものです。信頼できると考えられる情報を用いて作成しておりますが、情報の正確性、完全性等について保証するものではありません。記載の数値は小数点第2位を四捨五入して表示しています。また、将来の運用成果を示唆又は保証するものではありません。
またその上の青色で示しているテクノロジーについてですが、金というのは工業製品にも使われており、例えば半導体などの電子部品にも金は部材として使われております。その上の赤色で示しているのが投資で、2000年前半からETF(上場投資信託)を使った金への投資がスタートしたこともあり、需要が高まっています。そしてその上の緑色が中央銀行で、各国の中央銀行も一定の金を保有しているということがわかります。そしてこのグラフの中でも注目していただきたいのが2023年です。この年は2010年から見ると一番金の需要が多かったのですが、それを踏まえて2023年は金の価格が上昇しました。
司会:
確かに2023年は金の値段が上がって、多くの人が金への投資に注目している話がニュースなどで流れていました。
井上:
そうですね。さて次に、この需要の中でも投資および中央銀行に注目してみます。以下のグラフは2003年から2023年における投資と中央銀行における金の需要と価格推移をあらわしたものです。まず投資についてですが、2003年3月に世界初の金ETF(上場投資信託)がオーストラリア市場に登場したことに始まります。その後2004年にはNY市場にも新たな金のETFが上場したことで投資における金の需要が飛躍的に増加、価格も右肩上がりに増加しています。
また中央銀行を見ると、2003年から2009年にかけては金を売却していましたが、2010年を節目に買いに回るようになり、それ以降はずっと金を買う状況が続いています。
※上のグラフはWorld Gold Councilのデータを基に、FOLIOにて作成したものです。信頼できると考えられる情報を用いて作成しておりますが、情報の正確性、完全性等について保証するものではありません。記載の数値は小数点第2位を四捨五入して表示しています。また、将来の運用成果を示唆又は保証するものではありません。
司会:
その理由はなんでしょうか?
井上:
アメリカがリーマンショックを受けて金融緩和を進めるにつれ、世界各国の中央銀行が保有するドル、つまり外貨準備が増えたのですが、いくらドルを多く保有しているからといってアメリカの国債ばかりを保有しているのもリスク管理上良くないということで、資産を分散して金を保有するようになったのです。
司会:
よく金というのは「有事の金」と言われるように、戦争などの地政学リスクが高まった時に需要が高まるなどと言われますが、ドルの下落リスクなどに備えて金を保有するというのも一つの理由なんですね。
井上:
そうですね。中央銀行の場合は、保有しているドルの投資先を米国債券だけでなく金を加えることで、米国のデフォルトリスクやドルの価値の下落に備えようという考えがあるのだと思います。
どういう時に金は上がるのか?
司会:
需要が高まれば価格は上がる、まあそれは当たり前と言えば当たり前の話なのですが、では金というのはどういう市況下で上昇する傾向があるのでしょうか?
井上:
ではまず米国の長期金利に注目して解説していきましょう。以下のグラフは、アメリカの長期金利(米国10年債利回り)とROBOPROが投資対象としている資産の累積リターンの推移を表したものです。
まずアメリカの長期金利に注目して頂きたいのですが、2018年から2020年にかけて、途中で紆余曲折はあるものの緩やかに下がっていたのですが、一方でその期間の金に注目すると上昇しているのがおわかりになるかと思います。
しかし一方で、2020年8月以降の長期金利の上昇局面では、金は逆に下落しています。
※ 本資料は、過去の特定の時点において投資していたETFについて解説するものであり、 実際にROBOPROが投資するETFは、投資一任契約に基づき投資運用業者であるFOLIOが適宜選定するため、記載日以降も同一銘柄が選定されることを示唆又は保証するものではありません。
※ 本グラフは、2018年8月31日を起点とし、過去の特定の時点においてROBOPROが投資対象としていた各ETFの配当金再投資ベースのドル建ての価額につき、日次の累積収益率を表示したものです。また、米国10年債利回り、米国FF金利誘導目標値についても、同様に日次の終値を表示しております。データについては、Bloomberg等が提供する数値を用いて、FOLIOにて計算し作成したもので、信頼できると考えられる情報を用いて作成しておりますが、 情報の正確性、完全性等について保証するものではありません。
※ 本データは将来の運用成果等を示唆又は保証するものではありません。
司会:
つまり、簡単に言うと、アメリカの長期金利が下がっている局面では金は上昇傾向にあり、逆に金利が上がっている局面だと金は下落傾向にあるということですね。
井上:
さらにつけ加えますと、為替の関係から見た場合、一般的に米国金利が高い時あるいは上昇している時は米ドルも上昇しますが、米国金利が下落すると米ドルは下落します。この際に金を保有していると、金利低下により金価格が上昇するので、米ドルの下落による損失に対する備えとすることができます。
司会:
なるほど、ドルの下落に対するヘッジの機能もあるというわけですね。ところで一つお聞きしたいのが、そのような特徴を持つ金という資産をなぜROBOPROは投資対象にしているのでしょうか?
ROBOPROがなぜ金を保有しているのか?
井上:
需給の関係や金利の関係においても、金というのは魅力的な資産ということはご理解いただけたと思います。次に分散投資において重要な、他の資産との関係性について解説したいと思います。
以下は、2020年1月15日から2024年11月29日の期間における、金の月次リターンと米国株式、不動産、米国債券それぞれの月次リターンがどのような関係にあるかを示した図で、横軸が金の月次リターン、縦軸が各資産の月次リターンです。
※ 将来の傾向や投資収益等を示唆又は保証するものではありません。
※ Bloombergが提供する市場のデータを用いて、FOLIOにて計算し作成したものです。 信頼できると考えられる情報を用いて算出しておりますが、情報の正確性、完全性等について保証するものではありません。
※ 本グラフ、表において使用したデータは、毎月末日の各資産の米ドル建て配当込み価格から、月次リターンを計算し、金との相関関係を分析したものです。2020年1月は15日から月末で算出しています。相関係数は、小数第3位を切り捨て表示しています。
司会:
下にある相関係数と書かれた数値はなんですか?
井上:
相関係数というのは、よく分析の世界でよく使われる値なのですが、二つがどれだけ強く関係しているかを示した数値です。数値が大きければ大きいほど両者の間に強い関係性があるということです。相関係数は−1から1の間の値を取り、1に近ければ近いほど正の相関(一方の値が大きくなると、もう一方の値も大きくなる)傾向が強いことを示しており、一方で−1に近ければ近いほど負の相関(一方の値が大きくなると、もう一方の値は小さくなる)となり、値が大きくなればなるほど関連が強いことを意味します。
ここでポイントとなるのは、金という資産は他の資産とはあまり強い相関関係が無いということです。米国債券はやや高く0.40ですが、米国株式や不動産との相関関係は、0.22、0.28と低い相関関係にあるということです。
司会:
金は、米国債券との関係性はまあまあで、米国株式や不動産との関係は低いということですね。
井上:
そういうことになりますね。ちなみに以下は、先進国株式と新興国株式と新興国債券というこちらもROBOPROが投資対象としている資産ですが、これらの資産と金の相関係数も米国株式や不動産と比較すると若干高いものの、極めて高いという関係性ではないことがわかります。また参考までに、米国株式と先進国株式の関係性を同じ様に見てみると、相関係数が0.89と高くなっています。よってこの2つの資産は関係性が強いということが言えますね。
※ 将来の傾向や投資収益等を示唆又は保証するものではありません。
※ Bloombergが提供する市場のデータを用いて、FOLIOにて計算し作成したものです。 信頼できると考えられる情報を用いて算出しておりますが、情報の正確性、完全性等について保証するものではありません。
※ 本グラフ、表において使用したデータは、毎月末日の各資産の米ドル建て配当込み価格から、月次リターンを計算し、金との相関関係を分析したものです。2020年1月は15日から月末で算出しています。相関係数は、小数第3位を切り捨て表示しています。
司会:
ここから何がわかるのでしょうか?
井上:
はい、資産運用で大切なことの一つが、資産を集中させないでリスクの特徴の異なる資産に分散させることなのですが、他の資産と相関関係の低い金を保有することで、ROBOPROはきちんと分散投資をしながら運用がされていると言えるでしょう。
司会:
なるほど、長期的な資産形成で大切な投資対象資産の「分散」という意味でも、金は非常に重要な役割を担っているということですね。今回もありがとうございました。