この記事のポイント
前回までは一括投資と積立投資の違いについてと、4つのケースの市場動向において、この二つの投資方法の結果がどう変わるのかについてお話しました。
今回は、ROBOPROで資産運用をするにあたり、この一括投資と積立投資をどう有効的に活用するべきかについて、前回と同じくFOLIO金融戦略部シニア・アドバイザーである井上輝彦が解説します。
井上 輝彦(いのうえ てるひこ)株式会社FOLIO 金融戦略部 シニア・アドバイザー。1980年代から、アナリスト・ファンドマネジャーとして年金資金や投資信託の運用に従事。 2006年から大手資産運用会社にて株式運用部長を務める。 現職では、ROBOPROの運用分析やお客様向けの解説等を担当。
ROBOPROなら一括?積立?
司会:
最終回である今回のコラムでは、ROBOPROで運用するのであれば一括投資が良いのかそれとも積立投資が良いのか、そのあたりのことを教えてください。
井上:
では今回は、ROBOPROがサービスをスタートさせた2020年1月から2024年11月という約5年の期間において、一括投資の場合と、月10万円積立をしながら投資した場合を比較してみましょう。
なお今回のシミュレーションは、比較しやすいように一括投資、積立投資ともに、投資配分の変更に伴う売買益については課税前で計算しております。
この期間を月で計算すると58か月ありますから、積立の場合は毎月10万円を58か月積立(10万円×58か月=580万円)、一括投資の場合は最初に580万円という試算でシミュレーションしてみます。
以下の青線が一括投資の場合で、10万円ずつ積立ながら投資をした場合は黄色の線です。ここから何がわかるでしょうか?
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※ 上記のグラフは、一括投資(元本5.8百万円)についてはROBOPROスタート時に、定期積立投資(毎月10万円を58か月かけて購入)については、ROBOPROをスタート時と以降の毎月の定時リバランス時に追加購入した場合の元本と時価総額を表したもの。ROBOPROの購入価額は、毎月の定時リバランス時のFOLIO発表の累積リターンから基準価格(スタート時点10,000円)として算出。
※ グラフ中の時価総額は小数点以下を切り捨てて表示しています。
※ 本シミュレーションは、将来の傾向や投資収益等を示唆又は保証するものではありません。
司会:
まず一括で投資していた場合は、元本580万円が時価総額約1,175万円になっている一方で、定期的に10万円積立しながら投資をした場合は、時価総額が約880万円になっています。
井上:
そうですね、評価損益で見ると一括投資の場合は約595万円である一方で、積立投資の場合の投資収益は約300万円と、両者では約300万円の差が出ています。
一括投資をシミュレーションした青の折れ線で見ていただくとわかりやすいですが、ROBOPROのパフォーマンスは、途中下落している場面があったものの、全体としては右肩上がりになってますね。つまり前回のコラムのCase1のようなケースです。つまり、このようなケースの場合は、資金に余裕があるのであれば、積立で運用するよりも最初に一括で投資した方が収益額が多くなるということです。
司会:
ということは、積立投資よりも一括投資の方がいいってことですか?
井上:
いえ、そうとも言い切れません。確かに市場がずっと上がり続けているのであれば、一括投資をした方が得られるリターンが多くなりますが、例えば先程の線グラフの2020年2月〜3月あたりを見ていただくと、青の折れ線グラフが一時的に大きく下落しています。これはコロナ・ショックの頃なのですが、ざっと見ると約20%程下落していますね。
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司会:
たしかにそうですね。
井上:
ということは、もし580万円投資していたら、約20%なので約116万円評価損が出ている時期があったということです。一方積立投資の場合は、その時は元本が20万円だったので、約4万円の評価損が出る時期があったことになります。
人間は感情に左右されがちな上に、「損失回避性」といって利益から得られる喜びよりも損失から受ける苦痛の方が大きいと感じる生き物です。そう考えると、運用をしていて一時的に約116万円という大きな下落を経験してまうと「もう運用なんて止めようか」と思いたくなるかもしれません。
この損失回避性などの話は、次回のコラムでもう少し突っ込んでお話したいと思います。
司会:
下落の率は同じでも、評価損額の大きさが違うと心理的な感じ方も違いますよね。
井上:
そうですね、結果としては上記のように最初に一括で投資をした方が積立投資と比較して大きく評価益を得られるというメリットがありますが、大きく下落する場合はその影響を大きく受けるというデメリットがあります。
これに対して積立投資は、一括投資と比較して初期に運用している額が少ないので、相場が順調に上昇している状況が続けば投資収益額は劣後します。また、投資残高は時間の経過と共に増加しているので、後半に市場の影響を大きく受けるというデメリットもあります。しかし、下落相場においては相対的に投資対象資産を多く購入することができるので、相場回復時にはいち早く回復するというメリットもあります。
司会:
なるほど、両方にメリットとデメリットがあるということですね。
井上:
今回のまとめとしては、一括投資、積立投資ともにメリット・デメリットがあることを前提に、長期的な視点に立ち双方の利点を生かす投資を行っていただきたいということです。
積立投資か一括投資かという二者選択はおすすめしません。
ROBOPROはリリース来、とても安定したリターンを上げてきている運用商品ですので、まとまった資金があれば、まずは長期投資を前提に一括投資で運用しつつ、毎月発生する収入の一部を積立投資に回し、一括投資と積立投資のメリットを生かす運用を続けていただきたいと考えます。